KASHIWA印の有限会社猪熊製作所
新潟県燕市桜町230番地3

絞り加工と加工硬化

「加工硬化」とはそもそも?

絞り加工って何?の項で少し説明したように、塑性というのは曲げたら曲がったまま、という特性です。

その曲がったまま、をもう一度元の形に戻します。まったく元通りとはならないものの、一応まっすぐに戻ります。
もう一度同じ辺りを曲げてやって、また戻す・・・これを繰り返していくと針金はポロッと折れてしまいます。

 針金を何回も曲げている間、その部分の金属組織は揉まれている状態です。
ほとんどの金属は揉まれると硬くなる性質をもっていて、こうして硬くなることを「加工硬化」と呼んでいます。

 先ほどの例えでいくと、針金の折り曲げを繰り返した部分の金属組織が揉まれてカチカチになってしまった結果、針金は折れてしまったわけです。

まっすぐな状態の組織イメージ
曲げた時、外側は引っ張られ、内側は圧縮されています

 

絞り加工によって起きる加工硬化

 絞り加工においても、前述の針金を曲げることと同じく、絞っていく過程で材料の金属組織は揉まれています。 しかも、針金を曲げるような単純な揉まれ方でなく、上型に吸い込まれながら高さ方向にも伸ばされるような感じで大きく変形させられていきます。

このため、加工1回当たりの加工硬化の進行度合いは折り曲げなどに比べて非常に大きくなります。

 つまり、加工硬化は変形を加えた度合いに比例して大きくなり、例えば絞り加工で容器状のものを作った場合には、底部分より渕側のほうが絞りによって組織が揉まれる度合いが強く、その分加工硬化が大きく進んでいると言えます。

 板状の材料を器状に一回絞り加工した時点で、渕に近い部分には加工硬化が起きて硬くなっています。それを更に2番、3番絞りと加工を進めると、どんどん硬くなっていき金型への負担も増えていきます。最後には硬化しすぎて金型のほうが負ける(焼きついたり、キズがはいったり)ことになります。

 このため、さらに深く絞りたい場合には、途中で焼鈍と呼ばれる熱処理をしすることで元の柔らかさに戻してやってからさらに絞り加工を進める場合もあります。

加工硬化は悪いことなのか?

 何だか加工硬化は「問題」であるような書き方になってしまいましたが、逆にこれがメリットになっていることもあります。

 それは、当社の調味缶でも分かるように薄い板でも丈夫な製品になる点です。一番変形しやすい渕部分が硬くなっていることで、ネジも丈夫なネジとなります。

 0.4mmという薄板は材料の状態ではあまり強度はなく簡単に曲げることが可能です。しかし、絞り加工+それに伴う加工硬化をうまく利用することで、元の何倍も丈夫な製品とすることができています。

 また、要求される強度が同じと仮定した場合には、加工硬化で硬くなるのを見込んで板厚を設定することで、軽量化や材料費の削減といったことも期待できるわけです。


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