KASHIWA印の有限会社猪熊製作所
新潟県燕市桜町230番地3

絞りの材料にまつわる話… その2

 ここまでは本当に材料が悪ければ、の話です。

どんなに材料が良くても・・・

 材料がどんなに良くても加工者の能力に不足があればそれも問題となります。

 例えば絞り加工は加工時に表面に油を塗布して加工しますが、その加工油の性質(種類・粘度・他の油との調合比率)や塗布加減(薄く塗るか厚く塗るか)などによっても加工結果は大きく異なります。

 油だけでなく、プレス機の加工速度や圧力の設定なども重要です。これらの値は「前回これで良かったから今回もこれでOK」ということはまずないものです。

 なぜなら、前回と今とでは状況がまったく同じではないから・・・機械も金型も設定値も同じにしても結果が同じにならないのは、当たり前なことと思います。

 気温が違えば材料に塗布する油の性質も違うはずであり、一般的に油は高温下ではやわらかく低温下では硬く、温度によって材料の滑り加減も違ってくるものです。

 材料の油だけではありません。加工の圧力をかけているシリンダーに封入される空気や油も周囲温度の高低によってその特性が変わってきます。

 そういった現状の環境を勘案し「前回はこうだったが、今回はこのくらいの補正は必要かな?」と勘のようなものを働かせることも必要です。機械のマニュアルや前回の設定値などをメモったものだけで加工をすると、今回のようなトラブルになるのではないだろうか?と思います。

 細かくはもっと色々な原因があるのでしょうが、今回の材料屋さんが遭遇したトラブルの原因は大きくは2つくらいあるのではないでしょうか。

 加工者の勘のようなものさえ、その時の気分のようなものの影響を若干ながら受ける思うので、さらに材料特性の変動が加われば、これは面倒です。

 そんなわけで、加工結果を変動させるような要素をできるだけ減らすために、材料はできるかぎりしっかりしたものを使いたいものです。

自分でなんとかするように努力する

 本当に材料がどうにもならないほどダメな材料なのか?それともどこか設定や加工方法に問題があるのではないか?と考えてみることも大事です。

 冷静に考えてみましょう・・・。

 ミルシートが出てこないといっても、一応は自分よりもはるかに大きな規模の大企業が、想像を絶するような大規模な設備で生産する鋼材=少なくとも自分よりも信用力・技術力などが優れていると思われる者が生産した材料なわけです。それが様々なルートで手元に届いているわけですが、ルートの途中で人為的なミス(材質の記載間違いなど)でもしない限り、それが「加工できないくらいダメな材料」というのはちょっとおかしいと思います。

 もし加工できないならば、それはそう思う自分のほうにもどこか問題があるのではないか?と考えてもいいのではないでしょうか。

  それを「以前はできたのに今回はできない・・・」ことについての解決策で「今回は材料が悪い」というのではあまりにもお粗末ではないでしょうか。分かる人からみたら「こいつはマニュアル通りにしかできないやつなんだな」と思われても仕方がなく、材料屋さん他周りの人々にも多大なる迷惑をかけることになります。

 いろいろやって、本当にどう考えてみても、百歩譲って考えてみても、それでも納得がいかない。そういう時に初めて相手にクレームをつけることができるのではないでしょうか。自分で何とかせず、他人のせいにすればするほど、その目にかなう材料は手に入りにくくなっていくことと思います。

 どんな問題も自分で解決するのは苦労します。でもそれは解決するまでの一時だけで、自分で解決しない限りは何度でも同じようなトラブルに遭遇するでしょうし、またその度に同じような苦労をすることになることでしょう。

 今回のトラブルへの対応策としては・・・たぶん材料特性のバラつきが主たる原因と考えることはできる・・・が、それを材料のせいにするのではなく「そのような材料でも製品にすることができる」能力を磨く糧とすれば良いのではないでしょうか。

そうすることで、次回また微妙に異なる特性の材料を入手しても短時間のうちに安定して加工するノウハウを手に入れることができるし、材料屋さんも想定外のクレームに胃を痛めること減るだろうしで一石二鳥だと思います。


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