「磨き」から見る材料の良し悪し
前回は「加工する=所要の形状を得る」ということに関してだけ言うと、「材料が多少悪くても加工できるだけのいわゆる許容範囲の広さを手に入れればそれが根本的な解決策」と述べました。 しかしそうは言うものの、所要の形状になりさえすればそれで良いかといえば、そうとも言い切れません。
確かにある材料の良し悪し
例えば、「磨き」。加工工程の終盤で製品価値を高めるための仕上げ工程として重要な工程です。
磨きと一言でいってもその仕上げは様々な種類があり、工程数もかなり異なります。
最近話題の「磨き屋シンジケート」で有名な#1000仕上げともなれば、どれほどの工程をかけているか想像もできません。
当社の製品で丸型調味料入れの本体を例にとってみると、この製品は1枚のステンレス板を絞り加工で器状にしたあと渕を巻いたものです。

面の構成で大雑把にみると内側・外側それぞれの側面・底面で4面あることになります。それら4面に対し荒磨きと仕上磨きの2工程をかけるとすると、磨きの工程数は4×2=8工程あることになります。
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荒磨き中側面
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荒磨き中底面
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荒磨き外側面
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荒磨き外底面
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仕上磨き中側面
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仕上磨き中底面
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仕上磨き外側面
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仕上磨き外底面
面が違えばそこは分けて磨いていくことになりますが、どんな製品でも必ず最初の工程はあるわけで、この最初の工程において材料の良し悪しが磨きの作業性に大いに影響を与えることになり、具体的には、絞り加工した結果表面に現れる「梨地」の具合で、材料の良し悪しがはっきりします。
梨地とは?
「梨地」とは読んで字のごとく、材料表面が果物の梨の表面のようにザラザラした感じになることです。
絞り加工後の製品形状はまったく同じ、手で触った感じでもほとんど同じなのに、最初の荒磨きで表面を滑らかにするときにその作業性がまったくと言っていいほど違ってしまいます。
磨きの最初の工程である「荒磨き」の目的は、主には表面の微細な凹凸をつぶすことにあり、ここで表面を滑らかにできなければ、その後の工程をいくら丁寧に磨いても「何となくダメだなぁ・・・」ということになります。
だから、最初の荒磨きでできるだけ滑らかに凹凸をつぶさなければならないのですが、梨地が強く出てしまっているとその梨地を消すことに非常に苦労することになります。
磨きについて
磨きの原理は、バフと呼ばれる研磨粉が付いた回転体に製品を「面」で当てて削り取るようなもの。研磨粉の切れ、バフの回転力、製品を面として押し付ける力が必要で、そのどれかが足りなければ製品の表面は思ったようにキレイになりません。
製品の角をバフに当てて磨く場合、当たる部分は「線」または「点」であるため、比較的ラクに削れていくものが、「面」で当てることとなると相応の力で当てないと摩擦熱ばかり多く発生したり、熱変形により製品に歪みが発生することもあるので大変です。
絞り加工の結果の梨地については、材料の特性(成分や軟らかさ)によるものがかなりの部分を占めていると思われ、例えば絞り加工をして「以前はここまでひどい梨地にはならなかったのに今回はかなり梨地になるなぁ」という場合には、加工側(機械・金型・作業者)の問題というよりは材料の問題の可能性が高いので材料屋さんに相談すれば、材料屋さんはそれに適した=梨地になりにくい材料を提案してくれることでしょう。
はじめ良ければすべて良し
材料を発注し、それが製品になるまでの間、各工程ひとつひとつをとっても、また全体をつなげて考えても、「はじめ良ければすべて良し」でスタート地点としての材料の吟味はとても重要だと思います。


