KASHIWA印の有限会社猪熊製作所
新潟県燕市桜町230番地3

ステンレスと磁性について

磁石がくっつかないのがステンレス!?

 ステンレスか鉄か?を見分ける方法として、よく思いつくのが磁石です。磁石を近づけてみて、付けば鉄、付かなければステンレス・・・。しかし、磁石が付くステンレスも多く存在します。

 たとえば、ステンレスの種類のところで出てきたSUS430(18-0)ステンレス。これは磁石がちゃんとつきます。しかし鉄に比べて全然錆びにくいので、冷蔵庫のドアパネルなどによく用いられていますし、IH(電磁調理器)対応の鍋などでも使われていることがあります。冷蔵庫の場合なんかはかえって磁石がついてくれたほうがありがたいので、そういうステンレスを使っているわけですね。

SUS316に磁石が付く!?

 ところで以前、こんなお問い合わせをいただいたことがあります。

「SUS316で出来ている製品なのに、磁石が付く。これはSUS316ではなく、SUS430など耐蝕性の低い素材で作られているのでは?」

当社としては「そんなバカな」という思いから、使用している材料の製造元である日本冶金工業にも問い合わせたところ、以下のような回答が返ってきました。


この回答でも、SUS316でも加工硬化などによって磁性を帯びる場合があり、どんな場合でも磁石が付かないというわけではないということが確認できました。400系のステンレスほどにしっかり付く感じではありませんが磁石が付くことは確かです。

耐蝕性に優れるSUS304や316などのオーステナイト系ステンレスと、SUS430などのフェライト系・マルテンサイト系ステンレスを見分ける方法として半ば常識化しているのが「磁石が付くか付かないか」で、これにならえば当然のお問い合わせです。

加工硬化と磁性の関係

加工硬化と磁性が関係しているということは、底部と渕部で磁性が同じでないことからも分かります。容器状に絞り加工後の製品では、元の板状態に近い底部ではほとんど磁性が出ず、組織を大きく変形させている=加工硬化が進んでいる上渕部ほど、磁性が強くなっています。→絞り加工と加工硬化参照

絞り加工は折り曲げなどに比べて金属の組織が大きく変形させられている分、加工硬化も大きく進んでいます。その結果として曲げなどでは磁性を帯びないようなSUS304やSUS316でも磁性が出てしまうのではないかということが考えられます。

磁石が付く=耐食性が低下しているか?

SUS316など、元々磁性がない材料も加工によっては磁性が出ることは分かりました、それによって耐蝕性がなくなったのか?という点が一番気になる点ですが、これについて実際にソースを入れて放置して実験してみましたが(※1)ちゃんと持ちこたえることから、磁性を帯びてもSUS316の耐蝕性が損なわれていないことを確認しました。

※1実際にお使いいただく場合はできるだけこまめに清掃・乾燥させてお使いください。

 

同じSUS316製のソースポットでも磁石が付かないのもある

更に、他社製品でSUS316を使った同形状のもので磁性がないものもあるため、「B社のものはなぜ磁石が付かないのか?」というお問い合わせもいただいたことがあります。

これについては、焼鈍という熱処理の影響ではないか?と考えられます。
焼鈍とは、製品を数百℃に熱して冷ますことで、加工硬化=磁性を帯びたものを元に戻す処理で、硬化が戻ると同時に磁性も戻るために磁石が付かなくなるものと見ています。

なぜ、当社製品ではその焼鈍をしないのか?
焼鈍をすることで硬化が元に戻るわけですが、それと同時に硬化によって丈夫になった製品を軟らかくしてしまうことにもなっています。軟らかい製品はちょっとぶつけただけで凹んだりしてしまいます。別に磁石が付いてもSUS316の特性が失われていないのであれば丈夫にこしたことはないという考えで焼鈍処理はおこなっていません。


上へ